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TRIZの古典

アルトシューラ
「技術難問解決アルゴリズム ARIZ-85C

この論文は The Official G.Altshuller foundation の許可に基づいて掲載されたものです。(下記のURLはファウンデーションのサイトにリンクされています。書誌詳細はページ末尾

This paper was published with the permission of the Official G.Altshuller foundation: www.altshuller.ru/world/eng/index.asp.

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技術難問解決アルゴリズム[訳注1] ARIZ-85C

G.S.アルトシューラ

訳注1:直訳すると「発明問題解決アルゴリズム」ですが、「発明」に相当するロシア語の単語の主旨を意訳してここでは「技術難問」と翻訳することにしました。後に出てくるTRIZも直訳すると「発明問題解決理論」となります。

ARIZとは何か?

技術難問解決アルゴリズム (ARIZ) は{製品、装置、機構、技術プロセスなどの}[訳注2] 技術システムが発展・進化してゆく変化のあり方に内在する法則性をより所として、発明級の難問を分析し解決することを目的としたアルゴリズム形式の複合的な手順です。ARIZは技術難問解決理論 (TRIZ) とともに生まれ、発展してきました。

「技術難問解決アルゴリズム」という表現が初めて使われたのは週刊『経済新聞』(Ekonomi-cheskaya Gazeta)1965年9月1日号の付録「技術経済知識」の中です。また、ARIZという省略形はG.S.アルトシューラ『発明のアルゴリズム』(モスクワ、労働者出版、第1版:1969年、第2版:1973年)の中で初めて使われました。その後のARIZ改訂版は例えばARIZ-68、ARIZ-71のように名称に発表年度を示すようになりました。

ARIZを作ったのはG.S.アルトシューラです。しかし、後期の改訂版(ARIZ-77、ARIZ-82、ARIZ-85)が開発された際には多数の他のTRIZ専門家の指摘や提案が考慮に入れられました。

訳注2:以下全文を通じて{ }内は訳者が補って追加した箇所です。

第1部 問題の分析

  1. ステップ 1.1. 最小問題 [訳注3]
  2. ステップ 1.2. 主要要素における対立の状況:ワークとツール
  3. ステップ 1.3. TC-1とTC-2の図式モデル
  4. ステップ 1.4. 主たる生産的プロセスは何か
  5. ステップ 1.5. 対立の激化
  6. ステップ 1.6. 問題モデルの定式化
  7. ステップ 1.7. 標準解の活用

ARIZ第1部の主な目的は技術者が直面するあいまいな状況を{規定の}構造に当てはめて簡潔に表現された問題モデルに変化させることです。

訳注3:「最小問題」はARIZ特有のテクニックの1つです。状況をとらえる視点に大きな制約をつけることによって、問題の核心をクローズアップさせる狙いをもっています。ステップ1の但書をよく読んで「最小問題」を理解してください。

ステップ 1.1. 最小問題

このステップの作業}:
次のテンプレートの〈 〉内に該当する内容を記入して、問題状況を(専門用語を使わないで)最小問題の形式で記述して下さい。

  • {問題が対象としている}技術システムは
    〈システムの用途・機能〉ためのシステムで、
    〈システムの主要構成要素のリスト〉によって構成されています。
  • 技術的矛盾1 (TC-1)
    〈対立する状況の一方を記入する〉
  • 技術的矛盾2 (TC-2)
    〈対立する状況のもう一方を記入する〉
  • {課題として}次の状態を得ることが求められています。
    システムを変化させることは極少とする前提で、〈結果として必要な状態を記入する〉。

  • 技術システムは
    〈電波を受け取る〉ためのシステムで、
    〈電波望遠鏡のアンテナ、電波、避雷針、落雷〉によって構成されています。
  • TC-1
    〈避雷針を多数設置すると、アンテナを落雷から保護することについて信頼性が得られます、しかし、避雷針によって電波が吸収されてしまいます。〉
  • TC-2
    〈避雷針の数が少ない場合は、電波が避雷針に目立って吸収されることはありませんが、アンテナを落雷から保護することができません。〉
  • 次の状態を得ることが求められています。
    システムを変化させることは極少とする前提で、
    〈避雷針による電波の吸収をひきおこさないで、落雷からアンテナを保護する〉。

{著者による補足}
(上記の例では{みなさんが状況を理解し易いように}「避雷針」という専門用語が使われています。{しかし本来は}ここは専門用語を避けて「導電性の軸」「導電性の柱」あるいは単に「電気の伝導体」と表現すべきです。)

但書

1.最小問題は実際の状況に次の制約を追加することによって得られる状況の記述です:全ては当初のまま変化しない、あるいは単純化される、しかしその一方で、求められる作用(状態)が得られる、あるいは有害な作用(状態)が無くなっている。

当初の状況を最小問題に変化させるのは、問題を小さく捉えてそれを解決しようということではありません。逆に、もともと存在しない制約(「何もしないで」結果だけを得なくてはならない)を追加することによって、問題に本来含まれている対立状況をさらに先鋭化させて、妥協的な解決策を求める可能性をあらかじめ閉ざしているのです。

2.上記のステップ1.1.では、システムそのものの要素だけではなく、自然や環境の要素で技術システムと相互作用を行うものがあればそれも含めるようにしてください。例にあげた電波望遠鏡のアンテナ保護の問題では落雷と望遠鏡が受信する(宇宙の物体からの)電波とがシステムに含まれる自然の要素ということになります。

3.技術的矛盾 (= Technological Contradiction: TC) とはシステムの中で生じ{てい}る作用で、例えば、ある有益な作用が同時に有害な作用を引き起こすというような状況、あるいは、有益な作用を新たに導入する(既存の有益作用を強化する)、または有害な作用を排除する(有害な作用の影響を軽減する)ことがシステムのなんらかの部分ないしはシステム全体にとって悪い影響(受け入れがたい複雑化を含みます)を引き起こすといった状況です。

技術的矛盾は次のように記述します。
{矛盾に関与している}システムの要素をとりあげ、それに関して:

  • まず、それが1つの具体的状態の時に、何が良いことで、何が悪いことだと書きます。
  • 次に、その同じ要素が逆の状態にある時には、また、何が良いことで、何が悪いことだと書きます。

時には、問題の状況に明らかに含まれているのは作用を受ける物体だけで、技術システム(作用を与えるもの=ツール)が存在していない場合があります。ここには明らかな技術的矛盾は存在していません。このような場合には、(作用を受け取る物体=ワークについて)暫定的に2つの状態を想定することによって意図的に技術的矛盾の形式を整えるようにします。この際、2つめの状態は実際には起こりえない状態であってもかまいません。

例えば「光学的に透明な液体中にただよっている微小な粒子をどうすれば肉眼で観察することが可能か? 粒子はごく小さいので光は粒子を回折してしまうこととします。」という問題の場合には。

  • TC-1
    粒子が小さい場合には、液体は光学的に透明です、しかし、肉眼で観察することはできません。
  • TC-2
    粒子が大きい場合には、容易に観察可能です、しかし、液体は光学的に透明ではなくなってしまいます。

問題として与えられている条件ではTC-2を考慮に入れることは明らかに不要と思われます。そもそも、粒子の特性を変化させることは問題外です。実際(このケースにおいては)これ以降の考察の過程ではTC-1のみが前提となります。しかし、TC-2を想定することによって作用を受ける物体に関して新しい要請があることに気づくことができます。つまり、小さな粒子は、小さいままでありながら(ある観点からみれば)大きいともいえることが求められる……{という着眼点を与えてくれるのです。}

4.作用を与えるツールや外的環境に関連した専門用語は、先入観を避けるために必ず日常的な易しい表現に置き換えてください。これは、専門用語には次のような弊害があるためです:

  • ツールがその役割を果たす方法に関して常識的な考え方にとらわれてしまいます:
    「砕氷船は氷を砕くものだ」——実際には砕氷船は氷の間を通り抜けることも可能なのに;
  • 問題に含まれる物質の特性を目立たなくさせてしまいます:
    「コンクリート型枠」は単なる枠(板)ではなく「鉄製の」(あるいは木製の)枠(板)であるはずです。
  • 物質の状態について先入観を持たせてしまいます:
    「塗料」というと塗るものですから、どうしても液体あるいは固体を想定させてしまいますが、吹き付けるなどして使う気体の塗料もありうるはずです。

ステップ 1.2.

このステップの作業}:
技術的矛盾の対立状況に関与している2つの要素を書き出します:{2つの要素とは、作用を受けるもの=}ワークと{作用するもの=}ツールの2つです。

ルール1.
問題の条件としてツールが2つの状態を取ることが可能な場合には、2つとも記載することとします。

ルール2.
問題の中に相互作用をしている同じような要素の組合せが複数ある場合には、その中から1つだけ取り上げることで十分です。


ワーク − 落雷と電波
ツール − 導電性の軸(多数の軸、少数の軸)

但書

5.ワーク − は問題の条件で加工(作成、変化、交換、改良、有害な作用から保護、観察、測定など)する対象とされている要素です。観察や測定が課題の場合には本来の機能としてはツールである要素がワークとして位置づけられることがあります。例えば、研磨ディスクをワークとして捉えるといった具合です。

6.ツール − はワークに直接作用する要素です({工作機械の}フライス盤ではなく{金属を直接切削する工具の}フライスであり、バーナーではなく炎です)。ワークを組み立てる際に使われる個々の部品がツールとみなされることがあります。ブロック玩具の個々のブロックがツールで、ブロックで作る物、例えば建物など、がワークです。

7.対立状況に関与している2つの要素といっても、一方の要素が二重の役割を果たしている場合があります。例えば、あるワークに対して2つのツールが同時に作用しなくてはならないといったケースで一方のツールが他方の邪魔をしている場合。あるいは、2つのワークが単独のツールから作用を受けなくてはならないケースで一方のワークが他方の邪魔をしている場合などです。

ステップ 1.3.

このステップの作業}:
添付の表1を使ってTC-1とTC-2を図式モデルにします。

  • TC-1
    多数の導電性の軸
    ステップ1.3. 図1
  • TC-2
    少数の導電性の軸
    ステップ1.3. 図2

但書

 8.表1には典型的な矛盾(ジレンマ)の図式モデルが示されています。実際の状況の本質をよりよく表現できる場合には、表に含まれていない図式モデルを使っても結構です。

 9.問題によっては複数のリンクが含まれる矛盾図式モデルに出会うことがあります。

例えば:

ステップ1.3. 図3

この矛盾図式モデルは、{2つの}単純な図式モデルの組合せと捉えることができます。

ステップ1.3. 図4

ここでは、Бを変化させられるワーク{Ба}とみなすか、あるいはБをAの基本的な特性(あるいは状態)を転嫁したもの{Ба}とみなすことによって単純な図式モデルの組合せと把握しています。

10.矛盾の対立状況は空間的な観点からだけではなく、時間的な観点でもとらえることができます。 例えば、多数の花に確実に受粉させたいという問題があります。ここでは、まず{花粉を花まで運ぶ}強い風が吹くことによって花弁がしっかりと閉じてしまいます。このため風は花粉を運んでくれはするのですが、次の段階で必要なところに{つまり、花粉を本当に運ぶことが必要なめしべまで}届けることができません。このように、実際のケースによっては、時間的な観点を持つことで解決しなくてはならない問題を正しくクローズアップすることができます。

11.ステップ1.2.と1.3.は問題の全体像を正しく把握する目的のものです。ですから、ステップ1.3.の後では1.1.に戻って、1.1. – 1.2. – 1.3.という流れに問題のとらえ方として一貫性の欠けるところが無いか確認する必要があります。そのようなところがあれば、整合がとれるように修正します。

ステップ 1.4.

このステップの作業}:
テンプレートを使って書き出した技術的矛盾の2つの文章の中から、本来の用途(問題の状況に示される技術システム——製品・装置・技術プロセス——の基本的な機能)がよりよく実現される方の文章を選びます。

{この際に}問題に関連する主要な生産的プロセスとは何なのかを書き出します。


電波望遠鏡のアンテナを保護することに関する問題では、システムの主要な機能は「電波を受け取ること」です。ですから、TC-2を選びます:TC-2では導電性の軸が電波に悪影響を与えないからです。

但書

12.2つの矛盾の文章の一方を選択するということは、ツールの、お互いに相容れない2つの状態のうちの一方を選択していることになります。これ以降の判断は選択したこの状態に即して行なってゆかなければなりません。例についていえば、「導電性の軸の数が少ない」という状態を、例えば、何らかの「ちょうど良い数」という風に置き換えることは厳禁です。ARIZは矛盾を穏やかにすることではなく、{存在する矛盾を}さらに先鋭化させることを求めるのです。

ツールの一方の状態に立脚したのですから、この状態を前提としたうえでもう一方の状態の時にだけ得られることになっている肯定的な側面も得られるようにしなくてはなりません。導電性の軸の数は少数です。この数を増やすことはしません。しかし、最終的な解決策においては、導電性の軸が多数あるときと同様に落雷時の電流を安全に流してやらなくてはならないのです。

13.測定に関する問題では、主要な生産的プロセス(=Main Productive Process: MPP)を特定するのが困難な場合があります。ほとんどいつも何らかの変化(部品の加工、製品の出荷など)を実現する目的があって、それに関連して測定が行なわれるわけです。ですから、測定に関連した問題のMPPは測定システム全体のMPPであり、システムの中の測定を行なう部分・部品のMPPではありません。例えば、出荷前の電球内部の気圧を測定する問題では、MPPは電球の出荷と考えなくてはなりません。電球内部の気圧の測定をそれ自体がMPPというわけではないのです。このような考え方の例外といえるのは、基礎科学分野での特定な測定に関連するケースのみです。

ステップ 1.5.

このステップの作業}:
要素の状態(作用)の極端なケースを示すことによって矛盾を先鋭化させます。

ルール3.
多くの問題が「要素の数が多い」か「要素の数が少ない」か(「強い要素」か「弱い要素」か)といったタイプの矛盾を含んでいます。このような場合には、一方の極限は(「数が少ない」の極限として)「要素の数がゼロ」(あるいは、「弱い要素」の極限として「不在の要素」)としなくてはなりません。


TC-2の「導電性の軸の数が少ない」に替えて「導電性の軸が無い」と考えることにしましょう。

ステップ 1.6.

このステップの作業}:
次のようにして、{矛盾を先鋭化させた}問題モデルを記述します。

  1. 矛盾を構成するの2つの要素
  2. 先鋭化された矛盾の状況
  3. 問題を解決するためにX要素が導入されるとしたら、そのX要素は何をしなくてはならないのか(何を保全するか、何を取り除くか、改良するか、確保するか、など)

  1. 存在しない導電体と落雷がある。
  2. 存在しない導電体は(アンテナによる電波の受信を)阻害しない、しかし、落雷から保護することはできない。
  3. 次のようなX要素が求められる。存在しない導電体(のアンテナによる電波の受信)を阻害しないという能力を維持しつつ、落雷から保護する。

但書

14.ここで記述する問題モデルは状況を完全に表現しているわけではありません。技術システムの中から、ある部分だけが意図的に取り出されています。これ以外の要素の存在は、想定されるにとどまっています。ですから、4つの要素(アンテナ、電波、導電体、落雷)が含まれるアンテナの保護に関する問題では、上に書かれている2つの要素だけが残され、これ以外は括弧の中で触れられているだけです——{実際は、}全く触れなくても良いのです。

15.ステップ1.6.の後では必ず1.1.に戻って、記述された問題モデルの論理が通っているかどうか検証する必要があります。この際には、選択された矛盾の図式モデルにX要素を付け加えることによって確認することができます。 例えば:

16.X要素は必ずしもシステムに何か新しい物(部品・部分)を付け加えるということではありません。X要素とは、システムに加える何らか「X」の変化を一般的に示すものです。例えば、温度の変化であったり、システムや外部環境のある部分の構造・状態の変化であったりすることがあります。
ステップ1.6. 図1

ステップ 1.7.

このステップの作業}:
問題モデルに標準解[訳注4]を適用して問題を解決することができないか検討します。これによって問題を解決することができない場合には、ARIZの第2部に進みます。解決できた場合には、一足飛びにARIZ第7部に進むことができますが、その場合でも、第2部以降の分析を続けることが推奨されます。

但書

17.ここまでARIZ第1部に沿った分析と問題モデルの作成によって相当程度まで問題がはっきりし、多くの場合には、問題の中の一般的な側面と、個別の問題に固有の状況とを見分けることができるようになります。このため、当初{ARIZによる分析を行う以前}に問題を把握していた状態で標準解を適用するよりも、この段階まできてから適用する方が効果的なのです。

訳注4:標準解はARIZとは別のもう1つのTRIZツールです。過去の問題解決の例から抽出したもので、多くの問題を解決に導く標準的な指針が集められたものです。当サイトに翻訳がありますのでご覧ください:「小さな巨大世界:発明問題解決の標準」(76の標準解)

第2部 問題モデルの分析

  1. ステップ 2.1. 操作空間 (Operational Zone = OZ) の特定
  2. ステップ 2.2. 操作時間 (Operational Time = OT) の特定
  3. ステップ 2.3. 物質・場資源(Substance-Field Resources=物質・場資源)の特定

ARIZ第2部の目的は問題を解決する上で利用することのできる資源として、何があるのか棚卸しを行うことです:空間、時間、物質、場(力/エネルギー)の資源です。

ステップ 2.1.

このステップの作業}:
操作空間 (Operational Zone = OZ) を特定してください。

但書

18.もっとも単純なケースでは、操作空間とは問題モデルで示された矛盾が発生しているその空間領域のことです。


アンテナの問題では、OZは従来の考え方からすれば避雷針があるべき空間、つまりは、想像上の「空虚な」軸、あるいは「空虚な」柱を指します。

ステップ 2.2.

このステップの作業}:
操作時間 (Operational Time = OT) を特定してください。

但書

19.操作時間とは{問題を解決するための}資源として活用できるかもしれない時間{帯}を指します:
{具体的には}

  • 矛盾の発生している時間 T1

  • 矛盾が発生する以前の時間 T2

とがあります。

矛盾(特に、瞬発性の矛盾、短時間の矛盾)はT2を活用することによって排除(回避)できることがあります。


アンテナの問題では操作時間は2つのT1(落雷による放電が発生している時間)と(次の落雷放電までの時間)とが考えられます。このケースでは、T2はありません。

ステップ 2.3.

このステップの作業}:
物質・場資源(Substance-Field Resources=物質・場資源)をさがして下さい。
対象としているシステム、外部環境、ワークにふくまれる物質・場資源(Substance-Field Resources=物質・場資源)を明らかにします。物質・場資源のリストを作成してください。

但書

20.物質・場資源とは、そこにすでに存在している、あるいは問題状況によって容易に存在するようになる可能性を持っている物質とエネルギーを指します。物質・場資源には次の3種類が考えられます:

  1. システム内の資源
    1. ツールの物質・場資源
    2. ワークの物質・場資源
  2. システム外の資源
    1. いま取り上げている問題に特有の周辺環境の物質・場資源。例えば、光学的に透明な液体内の粒子の問題では水;
    2. どのような外部環境にも必ず存在する物質・場資源。「(問題を図だとすればその)背景あるいは地となっている」場。例えば重力のエネルギー、地球の磁力の場。
  3. 上位システムの資源
    1. 周囲の他のシステムが出す廃棄物(問題の状況下でそのようなシステムを利用することが可能な場合には)
    2. 「安価な」資源。利用することが可能でコストを無視することができる大変安いなんらかのもの。

実際の最小問題を解決する際には、最少の物質・場資源を利用するだけで求める結果を得ることが望ましいといえます。ですから、まずシステム内部の資源の活用を検討し、次にシステム外の資源、最後に上位システムの資源の利用を考察するようにしてください。これに対して、得られた解決策をさらに発展させて、その先の改良の予測を行なう(これを、「最大問題」と名付けます)ことが求められる場合には様々な資源を最大限動員することが妥当です。

21.当然ですが{ワークはシステムが加工を加える対象ですから、}問題を解決するためにワークを変化させることは{原則として}許されません。とすれば、ワークの資源というものがありうるのでしょうか? もちろん、ワークを勝手に変化させることはできません。つまり、最小問題を解決する際にワークを変化させることは妥当とはいえません。しかし、{ワークを変化させることが可能となる}次のようなケースが考えられます:

  1. {ワークが}それ自身で変化する;
  2. ワークそれ自身が全体として無限大に存在する(例えば、ワークが風であるような場合など)何らかの部分に限定して消耗する(つまり変化させる)ことは許される;
  3. 上位システムへと移行させる(レンガそれ自身は変化しないが、積み上げることによって家へと変化する)ことは許される;
  4. ミクロレベルでの構造を利用することは許される;
  5. なんでもないもの、つまり、空の空間と結びつけることは許される;
  6. 特定の時間に限定して一時的に変化させることは許される。

このように、本来のワークは変化させないで{も、しかしある観点からみると}変化させることができるという比較的稀なケースに限定して、ワークも物質・場資源に含まれることになります。

22.物質・場資源とは{問題状況の中に}すでに存在している資源です。{外部の資源を投入する前に}まず第1にこの資源を活用することが得策です。これが不十分ということがわかった場合には、他の物質やエネルギーを投入してもかまいません。なお、ステップ2.3.における物質・場資源の分析は予備的分析です。


アンテナの保護の問題で着目されているのは「不在の避雷針」です。したがって{システム内部には資源が存在しませんから}、物質・場資源に含まれるのは外部環境の物質とエネルギーだけです。このケースでは物質・場資源は空気ということになります。

第3部 IFRと物理的矛盾の特定

  1. ステップ 3.1. 理想的な結果 (Ideal Final Result = IFR-1) の公式による記述
  2. ステップ 3.2. IFR-1の一層強調した形での公式
  3. ステップ 3.3. マクロレベルでの物理的矛盾 (Physical Contradiction) の公式
  4. ステップ 3.4. ミクロレベルでの物理的矛盾の公式
  5. ステップ 3.5. 理想的な結果の公式 (IFR-2)
  6. ステップ 3.6. 標準解の適用

ARIZ第3部を適用した結果として求められるのは、{問題解決の}理想的な結果を公式の形で表現したもの (IFR) です。加えて、IFRが実現することを妨げている物理的矛盾(物理的矛盾)を特定することも必要です。理想的な解決策は実際にはいつでも実現可能なわけではありません。しかし、IFRの公式は最も優れた解答がどのようであるべきか、その方向を指し示してくれます。

ステップ 3.1.

このステップの作業}:
{下の}公式に合わせて理想的な結果 (IFR-1) を記述します

  • X要素は、
  • システムを複雑にすることや、有害な現象を引き起こすことは一切なしに、
  • 操作時間 (OT) に
  • 操作空間領域 (OZ) において、
  • ツールが確実に〈ここにツールの有益な作用を記入します〉を実行するようにしながら、
  • 〈問題で排除したい有害な作用を、ここに記入します〉を排除します。

  • X要素は、
  • システムを複雑にすることや、有害な現象を引き起こすことは一切なしに、
  • 操作時間 (OT) に
  • 操作空間領域 (OZ) において、
  • ツールが確実に〈アンテナによる電波の受信を阻害しない〉を実行するようにしながら、
  • 〈アンテナを落雷から保護しない〉を排除します。

但書

23.「有害な作用が有益な作用と結びついている」矛盾ではなく、他のタイプの矛盾が 存在することもあります。例えば、「新たな有益な作用を導入することによって、システムが複雑化する」とか「ある有益な作用が他の有益な作用と両立できない」というようなケースです。従って、上に示した公式は1つの例と考えてください。実際の矛盾のあり方に従ってIFRを記述することが必要です。

どのような形で表現することになっても、共通する考え方は次の通りです:
有益な特性を得ること(あるいは有害な特性を排除すること)は他の特性が悪化すること(あるいは、有害な特性が出現すること)を伴ってはならない。

ステップ 3.2.

このステップの作業}:
IFR-1に次の追加条件を加えて、一層制約を加えた形で理想的な結果を表現します:

  • {問題状況に既存の}物質・場資源を活用することとし、システムに新たな物質やエネルギーを持ち込むことは一切してはならない。


アンテナの保護の問題モデルではツールは存在しません。(あるいは、「不在の避雷針」がツールということになります。) 次の但書24.に従って、IFR-1に外部環境の資源を導入しなくてはなりません。つまり、X要素を外部環境の資源である「空気」に置き換えます。(より厳密には次のように言えます:「不在の避雷針に替えて空気の軸」)

但書

24.但書20.と21.に従って最小問題を解決しようとする際には、次の順番で物質・場資源の活用を検討しなくてはなりません:

  • ツールの物質・場資源
  • 外部環境の物質・場資源
  • それ以外の外部からの物質・場資源
  • ワークの物質・場資源(但書21.に基づく制約が無い場合)

問題解決につながる可能性のある物質・場資源は多様ですからが、これ以降の活用可能な資源の分析には上の4つ物質・場資源のラインそれぞれについて進めることになります。通常、実際のケースでは問題の条件によって一部のラインの分析は不要となります。とりわけ、最小問題を解決することが目的の場合は解答のアイデアが得られるまで分析を行なえば十分です;例えば、「ツールのライン」で解答のアイデアが得られた場合には、それ以外のラインを検討する必要はありません。しかし、最大問題を解決するためには、その問題状況で可能性があるラインについては全て検討することが望ましいのです。仮に「ツールのライン」で解答が得られたとしても、さらに、外部環境、それ以外の外部、およびワークの物質・場資源の検討も行なうべきなのです。

ARIZを学習する際には分析の各段階が一歩一歩並行的に変化してゆきます:あるラインで得られたアイデアを他のラインに応用することができるようになります。これが、上位システム、システム、下位システムそれぞれの変化を同時に視野に入れる能力:いわゆる「マルチ・スクリーン・シンキング」です。

注意!
問題解決には従来のものの見方の破壊が伴います。その際には言葉で表現することが難しい新しいイメージが出現します。例えば、染料について水に溶けないで溶ける(色をつけずに、着色する)特性を持った染料というようなイメージです。

ARIZを使う際には、作業プロセスを平易な表現で記録することが求められます。あらゆる専門的・技術的な用語を避けて、むしろ「子供っぽい」単語で表現してください。専門的・技術的な用語は先入観や思い込みを強めてしまいます。

ステップ 3.3.

このステップの作業}:
マクロレベルでの物理的矛盾を次の公式表現に従って記述します:

  • 操作空間において
  • 操作時間の間
  • 〈矛盾の一方となっている必要な作用を記入します〉のために、
    〈ここに、求められる物理的状態をマクロレベルで記述します:たとえば「熱い」〉という状態が存在しなくてはならない。
  • 同時に、〈矛盾のもう一方となっている必要な作用を記述します〉のために、
    〈ここに、求められる他方の/逆の物理的状態をマクロレベルで記入します:たとえば「冷たい」〉という状態が存在しなくてはならない。

但書

25.操作空間において必要とされる物理的状態について、お互いに相容れない2つの反対の状態を物理的矛盾(Physical Contradiction)と名づけます。

26.上に挙げた公式表現に沿って全てを記述することが難しい場合には、次の簡単な表現を使っても結構です:

  • {これこれの}要素(あるいは、操作空間内の要素の一部)は
  • 〈必要な要件の一方を記入します〉のために、存在する必要があり、かつ、
  • 〈必要な要件のもう一方を記入します〉のために、存在してはならない。

  • 空気の軸について
  • OTの間
  • 〈落雷を逃がす〉のために、〈導電性〉という状態が存在しなくてはならない。
  • 同時に、〈電波を妨げない〉のために、〈導電性ではない〉という状態が存在しなくてはならない。

このように公式の形に合わせて記述することによって、次の解答が導き出されます:

  • 空気の軸は落雷が発生しているときには導電性でなくてはならず、そうでないときには、導電性であってはならない。
  • 落雷という現象は比較的まれな現象であり、かつ、ごく短時間に終わってしまう現象です。とすれば、リズム一致の法則[訳注5]に従って:
    『避雷針が出現するタイミングは、落雷が発生するタイミングと一致しなくてはならない』ことになります。

この解答はもちろん、完全ではありません。例えば、「落雷が発生するときに空気の軸を導電性に変化させるにはどうしたらよいのでしょうか」。あるいは「落雷が終わると直ちに導電体が消滅するようにするにはどうしたらよいのでしょうか」。{という問題が残っています。}

注意!
ARIZに従って問題を解決するときには、写真が現像されるときのように解答は徐々に「浮かび上がって」きます。従って、解答のヒントが浮かび上がってくる初期の段階で作業を切り上げて、まだ不十分な解答を固定してしまうことは危険です。ARIZを使った問題解決作業は、最後までやり遂げることが求められます。

訳注5:TRIZの最も基本的なツール『技術システムの進化の法則』の中の1つです。

ステップ 3.4.

このステップの作業}:
ミクロレベルでの物理的矛盾を次の公式に沿って記述します:

  • 操作空間において
  • 操作時間の間
  • 〈ここに、3.3.で求められる、一方のマクロレベルの物理的状態を記述します〉のために、
    〈ここに、粒子に求められる物理的状態あるいは作用を記述します〉をもった粒子が存在する必要がある。
  • 同時に、〈ここに、3.3.で求められる、もう一方のマクロレベルの物理的状態を記述します〉のために、そのような粒子が存在してはならない(あるいは、〈ここに、粒子に求められる反対の物理的状態あるいは、反対の作用を記述します〉をもった粒子が存在する必要がある)。

  • 空気の軸の中には
  • 落雷の発生時に
  • 〈落雷を逃がす〉目的で、〈導電性であるという状態〉のために
    自由電荷が存在する必要がある。
  • また、それ以外の時間では、
    〈電波を妨げない〉目的で、〈導電性ではないという状態〉のために
    自由電荷が存在してはならない。

但書

27.ステップ3.4.では「粒子」が何であるか具体的につきつめる必要はありません。場合によって磁区、分子、イオンなどなどです。

28.粒子は次のような場合があります: 

  1. 単に物質の粒子である
  2. 物質の粒子がなんらかのエネルギー価を帯びている、そして
  3. (まれなケースですが)エネルギー場の小さな領域である。

29.問題に対してマクロレベルでの解答しかない場合には3.4.の公式表現ができないことがありますが、それによって、問題はマクロレベルで解決されるという新しい情報を得ることができます。

注意!
ARIZのこれまでの3つの部の作業によって、当初の問題は大きく構造を変化させられます。この構造変更の終着点が次のステップ3.5.です。ここでは、IFR-2を公式に沿った形で表現することになります。それと共に、我々は新しい純粋に物理学の範疇の問題と出会うことになります。その後では、その物理的な問題と取り組むことになります。

ステップ 3.5.

このステップの作業}:
理想的な結果を次の公式(IFR-2)に沿って記述します。

  • 操作空間〈ここに具体的に記載します〉は
  • 操作時間〈ここに具体的に記載します〉に於いて
  • 自ら、〈矛盾の2つの要素である2つの物理的状態をマクロレベル、あるいは、ミクロレベルで記載します〉を可能にしなくてはならない。


空気の軸の中の中性の分子は、落雷時には自ら自動的に自由電荷に変化し、落雷放電終了後は自動的に中性の分子に変化しなくてはならない。

新しい問題の意味: 落雷放電の時には軸の内部の空気は外部の空気と違って自動的に自由電荷となり、それによってこのイオン化した空気の軸は「避雷針」の働きをして雷を自分に引き寄せる。落雷が終わると、空気の軸の中の自由電荷は自動的にまた中性的な空気分子へと戻らなくてはならない。こうして残された問題を解決するには、高校生の物理学の知識があれば十分である。

ステップ 3.6.

このステップの作業}:
IFR-2の公式に沿ってあらわされた物理的問題を解決するために、標準解が使えないか検討します。問題を解決することができない場合はARIZ第4部に進みます。

問題を解決できた場合には、一足飛びにARIZ第7部に進んでも結構です。ただし、その場合でも第4部の分析を行なうことを推奨します。

第4部 物質・場資源の動員と活用

  1. ステップ 4.1. 「小さい人」モデル
  2. ステップ 4.2. 「IFRから一歩後退」
  3. ステップ 4.3. 物質資源の組合せ
  4. ステップ 4.4. 既存の物質資源の交換
  5. ステップ 4.5. 派生的物質資源
  6. ステップ 4.6. 電気エネルギーの場の導入
  7. ステップ 4.7. 「エネルギー場とそのエネルギーに対応する物質」セットの導入

先にステップ2.3.でコストをかけないで利用できる既存の物質・場資源を明らかにしました。ARIZ第4部では活用可能な資源をさらに増やす体系的な操作を行います。言い換えると、既存の資源を少し変化させることによって、ほとんどコストをかけないで手に入れることのできる派生的な資源を探索します。ステップ3.3.から3.5.で物理的な原理を応用して問題状況を解決策へと変化させる操作が始まりましたが、第4部はその操作の流れの継続です。

ルール4.
問題対象に含まれるどの部分(部品、素材、部位、粒子、分子など、またはその一部)をみても、すべてなんらかの物理的状態で1つの機能を果たしていなくてはいけません。ある部分Aがあってそれが1と2という2つの作用をもたらすことができないとすれば、もう1つの部分Bをもってくることが必要です。こうして例えば、Aには1の作用を、Bには2の作用を担当させるというふうにします。

ルール5.
新たな部分Bをさらに2つのグループB-1とB-2に分けることも可能です。こうすることで、「追加のコストなしに」Bの2つの部分の相互作用によって新しい3という作用を得ることが可能です。

ルール6.
部分をグループ分けする考え方は「システムの中にはAしか存在することができない、あるいは、許されない」と言った場合にも有効です。Aを2つのグループに分けて、1つのグループは従来の状態のまま残して、他のグループは状況によって求められる状態に変化させるのです。

ルール7.
このように新たに使われたりグループ分けされた部分は、必要な作用を終えた後には以前から用いられていた部分と、あるいは始めのグループとなんら変わらない状態になっていることが求められます。

但書

30.以上のルール4.から7.はARIZ第4部の全てのステップに共通して適用されます。

ステップ 4.1.

このステップの作業}:
「小さい人」モデル

  1. 「小さい人」モデルを使って問題に含まれる矛盾の構造を表現します
  2. 「小さい人」の行動によってこの構造の中の矛盾を変化させ解消するようにします
  3.  a.からb.への変化を、現実の技術的状況に置き換えるとどうなるか考察します

但書

31.「小さい人」モデルとは次のような方法です。
問題に含まれる相互に矛盾する要請の状況をポンチ絵で図式的に表現します。1つのポンチ絵で表現しても、複数のポンチ絵を使っても結構です。このポンチ絵に多数の「小さい人」(実際の状況を表現するために、小さい人は1つのグループ、複数のグループ、大群衆などとして使い分けます)。「小さい人」を使って表現するのは問題モデルの中の変化する部分とします。(ツールあるいはX要素です)

相互に矛盾する要請というのは、問題モデルに含まれる矛盾、あるいは、ステップ3.5.に示される2つの物理的状態を指します。原理的には2つの物理的状態を考えるほうが良いのですが、物理的な問題(3.5.)を「小さい人」モデルに変えるやりかたに厳密なルールが無いので、矛盾から「小さい人」モデルを作るほうが易しいといえます。

ステップ4.1. (b) は、しばしば、1つのポンチ絵の中に、良い状態と悪い状態との2つの状態を表現して描くことで表現可能です。また、状況が時間を追って変化してゆくというケースでは、変化の流れをたどった一連のポンチ絵で表現すると良いでしょう。

注意!
「小さい人」モデルの作業でいい加減なポンチ絵を描いて済ませるという誤りを犯すことがよくあります。良いポンチ絵は次のようなものです:

  1. 状況をよく表していて、説明が要らない
  2. 物理的矛盾を取り除く一般的な仕組みを現すことによって、新たな情報を提供している

但書

32.ステップ4.1.は補足的なステップです。この後で活用可能な派生的資源を検討するのに先立って、操作空間およびその近傍にある物質の各部分・部位がどんな役割を果たさなければいけないのかなどをはっきりと把握するために、このステップが必要なのです。「小さい人」モデルは理想的な作用(「何をしなくてはならないのか」)をその物理的具体性(「それをどのように実現するか」)と切り離してはっきりと理解させてくれます。これを行なうことで、先入観が取り除かれ、イメージを描く作業に集中することが可能になるのです。ですから「小さい人」モデルは心理学的方法なのです。ただし「小さい人」モデルは技術システムの進化の法則性に則って行ないます。ですから、「小さい人」モデルによって問題に対する現実的な解決策が得られることもまれではありません。しかし、その場合にも作業をそこで中断してはいけません。物質・場資源の検討は必ず行なってください。

ステップ4.1. 図1 a) 想像上の空気の軸の中の空気の「小さい人」は、それ以外の場所の空気「小さい人」となんら違いはありません。どちらも同じように中性的です。(ポンチ絵では、これを次のように表現しています:「小さい人」たちはお互いに両手と両手を結んでいます。どの手もふさがっていますから、雷をつかむことはできません。)

ステップ4.1. 図2 b) ルール6.に従って「小さい人」を2つのグループに分けます。想像上の空気の軸の外部の「小さい人」は変化しません(両手を結び合った、中性のカップル)。他方、空気の軸の中の「小さい人」は相変わらずカップルとなっています(そのことによって、依然として中性だということを表現します)が、いまでは片手だけで結ばれています。これによって、雷をつかもうとする姿勢を表現します。

他にも、ポンチ絵の描き方はあります。しかし、どう描くにしても「小さい人」を2つのグループに分けて、空気の軸のなかの「小さい人」を変化させなくてはならないのは明らかです。)

c) (空気の軸の中の)空気の分子は中性の分子であることに変化はないものの、一層イオン化されやすい状態になる。もっとも簡単な方法——空気の軸の中の気圧を下げる。

注意!
最小問題を解決する目的で資源を活用することの趣旨は、資源を全て使うということではありません。そうではなく、最低限の資源を使用することによって最大限効果的な解決策を得ることが狙いです。

ステップ 4.2.

このステップの作業}:
問題の条件によって完成したシステムがどのようなものかわかっていて、「どうすればそのシステムを得ることができるのか」が問題である場合には、「IFRから一歩後退」する方法を使うことができます。完成したシステムのイメージを描いて、その絵から最小限の何かを取り去る形の変更を加えます。

例えば、IFRは2つの部品が接触していることだとしましょう。とすれば、IFRからの最小限の「一歩後退」とは部品の間に隙間を描きます。そうすると新たに次の問題(最小問題より限定されたミクロ問題)がクローズアップされることになります:
この欠陥をどのように取り除くか?

「一歩後退」によって出現した新しい問題=ミクロ問題は通常それほど難題ではなく、それを解決することによって当初の問題と新たに出現した問題との両方を解決できる方法が発見されることがよくあります。

ステップ 4.3.

このステップの作業}:
2つ以上の物質資源を組み合わせることによって問題を解決できないか検討します。

但書

33.問題を解決するために既存の物質資源を(そのままの状態で)利用することができるとすれば、そもそも問題は発生しないか、あるいは自動的に解決されることでしょう。通常は新たな物質を使うことが求められますが、そうするとシステムが複雑になってしまったり副次的に有害な作用が現れるなどのマイナスが生じます。ARIZ第4部で物質・場資源について検討する主旨は、この矛盾を解決して新たな物質を導入せずに導入することにあります。

34.ステップ4.3.で行なうこととは(もっとも単純なケースでは)それぞれが均一な2つの物質を異種の要素からなる二元複合物質に置き換えることにつきます。

次のような疑問が生じると思います:「1つの均一な物質を、同種のものからなる二元物質に置き換える、あるいは多元物質に置き換えるのではいけないのだろうか?」この疑問のように、システムを同種要素からなる二元システム、多元システムに置き換える例は(標準解3.1.1.のように)広く行なわれていることです。しかし、この標準解は複数のシステムを組み合わせることを示唆しているのですが、現在のステップ4.3.では物質を組み合わせることが問題になっているのです。2つの同種のシステムを組み合わせた場合には新しいシステムができあがります。ところが、同一の物質の2つの「断片」を組み合わせたのでは単に量が増えることしか生じません。

同種のシステムを組み合わせて新しいシステムを作る場合の1つの特徴は、新しいシステムの中に組み合わされた古いシステムの境界が保存されているという点にあります。例えば、当初のシステムが一枚の白紙だったとします。このシステムを多数組み合わせた多元システムはノート(帳面)となるのであって、ぶ厚い白紙になるのではありません。ところで、境界を保存するということはそこに境界となる第2の物質(たとえ何も無い空間といえども)をもってこなくてはならないということです。ここで、次のステップ4.4.が出てきます。ステップ4.4.では2つ目の「境界」物質の役割を「何も無い空間(スペース)」が果たす形の異種・擬似多元システムが取り上げられます。確かに「何も無いスペース」というのは組み合わせる相手としては特殊なものです。物質とスペースとを組み合わせたときには境界は必ずしも目に見えるわけではありません。しかし、新しい特性が生じます。それが必要なのです。

ステップ 4.4.

このステップの作業}:
既存の物質資源をなにも無いスペースに置き換えること、あるいは、物質資源とスペースとを組み合わせることによって問題を解決することが可能か検討します。


空気となにも無いスペースとの組合せとは、薄い空気=空気の気圧を下げた状態に他なりません。高校の物理学教科書を読むとガスの気圧を下げると放電が発生するのに必要な電圧(あるいはガスの電気抵抗)が低下することが書いてあります。ここまで来ると、アンテナの問題の解決策は完全に得られたと言えます。この件に関するソ連邦発明者証 No.177 497の内容は次の通りです:

「以下の特徴をもつ避雷針。電波に影響を与えない特性を得るため、非導電性の素材で、内部が密閉されたパイプを作り、雷雲により電位差が生じた際に放電開始電界強度が最低となるように内部の空気圧を設定する。」

但書

35.なにも無い空間=スペースは非常に大切な物質資源です。どんな場合にも無限定といえる量で存在し、コストも極めて低く、既存の資源と容易に混合することのできる資源です。例えば、中空の構造、多孔構造、気泡、泡などさまざまな形態が考えられます。

資源としての空間は真空でなければならないわけではありません。物質が固体であればそれと混合するスペースは液体や気体で満たされていてもよいのです。また、物質が液体である場合にはスペースは気体の入っている気泡でも問題ありません。さらに内部に構造をもった物質の場合は構造水準の低い部位(但書37.を参照してください)は一定程度の空スペースとみなすことができます。

ステップ 4.5.

このステップの作業}:
既存の物質資源から派生する物質資源(あるいは、派生する物質資源とスペースとの組合せ)を活用することによって問題を解決できないか検討します。

但書

36.派生的な物質資源は既存の物質資源の相転移によって得ることができます。例えば、既存の物質資源が液体だとすれば、液体が相転移した固体や蒸気が派生資源となります。物質資源の分解によって得られるものも派生的資源とみなします。分解する物質資源を水とすれば水素と酸素が派生資源となります。複数の要素からなる物質資源が分解する場合には個々の構成要素は派生資源になります。既存の資源の分解や燃焼によって生じる新たな物質も派生資源です。

ルール8.
問題を解決するために物質の微粒子(例えば、イオン)が必要とされ、しかし、問題状況によってそのような微粒子を直接得ることが許されない場合には、構造的に上位の物質(例えば、分子)を分解して必要な微粒子を得るようにします。

ルール9.
問題を解決するために物質の微粒子(例えば、分子)が必要とされ、しかし、問題状況あるいはルール8.によってそのような微粒子を直接得ることができない場合には、構造的に下位の物質(例えば、イオン)に何かを付け加え、あるいは、このような物質を組み合わせることによって必要な微粒子を得るようにします。

ルール10.
ルール8.を適用するもっとも容易な方法は必要な微粒子より1段階だけ上位の「完全な」あるいは「過剰の」(電子が過剰となっているマイナス・イオン)状態にある物質を分解することです。また、ルール9.を適用する場合のもっとも容易なやりかたは、1段階だけ下位の「不完全な」状態にある物質に何かを付け加えることです。

但書

37.物質は多数の水準を持つ階層体系を作っています。問題解決のためには、次の階層水準を視野に入れておくことで十分でしょう。

  • 低度の加工を施された物質(もっとも単純な素材、例えば「針金」)
  • 多分子構造: 各種結晶体、重合体、異種分子構造
  • 高分子
  • 分子
  • 分子の一部、原子群
  • 原子
  • 原子の部分
  • 素粒子
  • エネルギー場

ルール8.の主旨: 新しい物質は、既存の物質資源や外からシステムに取り入れることのできる物質の大きな構造を分解するという間接的な方法で得ることが可能です。

ルール9.の主旨: もう1つの間接的な方法は、必要なものよりも小さな構造のものに何かを付け加えることで必要な物質を得ることです。

ルール10.の主旨: 分解する対象としては「不完全な粒子」(陽イオン)よりも「完全な粒子」(分子、原子)を選択する方が有利です。不完全な粒子はすでに部分的に分解されていますから、さらに分解しようとすると大きな抵抗があります。これとは逆に、追加する方向で必要な粒子を得ようとする場合には何かと一緒になって完全な粒子になろうとする傾向を持った「不完全な粒子」が有利です。

ルール8. – 10.は既存の物質資源の中から、あるいは、簡単に取り込むことのできる物質から派生的資源を得る効果的な方法を示しています。これらのルールは個々の具体的なケースで必要となる物理的効果を示唆してくれます。

ステップ 4.6.

このステップの作業}:
物質資源の代わりに電気エネルギーの場、あるいは、2つの電気エネルギーの場の相互作用を使用することによって問題を解決できないか検討します。


パイプを切断するために回転させてねじ切る方法(ソ連邦発明者証 No.182671)があります。しかし、回転させるにはパイプを機械的に保持する必要がありますが、これでは力をかけることによってパイプが変形してしまいます。電気を使ってパイプ自身に回転モーメントを生じさる方法が、ソ連邦発明者証 No.342759で登録されています。

但書

38.問題状況によって、既存の物質資源も派生的物質資源も利用することができない場合には、(電流として、あるいは動かない状態で)電子を使うことを考えます。電子は対象の物体に常に含まれる1つの「物質」です。さらに電子は、エネルギーの場と組み合わせて使えば極めて制御しやすい物質なのです。

ステップ 4.7.

このステップの作業}:
エネルギー場とそのエネルギーに対応する物質とのセット(例えば「磁気と強磁性体」、「紫外線と蛍光物質」、「熱と形状記憶合金」など)を使うことによって問題を解決することができないか検討します。

但書

39.既に、ステップ2.3.で既存の物質・場資源を検討しました。ステップ4.3. – 4.5.では既存の資源から生じる派生的資源を扱っています。ステップ4.6.は既存または、派生資源という原則から部分的に外れて「外からの」エネルギー場を取り入れることを検討しました。ステップ4.7.はその方向をさらに一歩進めて、「外からの」物質とエネルギー場を取り入れることを検討します。

最小問題にたいする解決策は物質・場資源を消費する程度が少なければ少ないほど優れているといえます。しかし、全ての問題が資源をほとんど使わずに解決できるわけではありません。時には外部から物質とエネルギー場という「構造」を導入するという形で原則を外れなければなりません。しかし、このようにするのは問題状況に含まれている物質・場資源ではどうにもならない不可欠なケースに限定しなくてはいけません。

第5部 情報フォンドの利用

  1. ステップ 5.1. 標準解の利用
  2. ステップ 5.2. 問題類型の利用
  3. ステップ 5.3. 物理的矛盾解決法の利用
  4. ステップ 5.4. 「物理的効果インデックス」の利用

ほとんどのケースではARIZ第4部によって問題解決策が得られます。解決策が得られた場合には、4部から一足飛びに7部に進んで結構です。しかし、4.7.までのステップで解決策が得られなかった場合には5部の各ステップを検討する必要があります。

ARIZ第5部の目的はTRIZの情報フォンドに集められた経験を活用することにあります。ARIZ第5部に到達するまでに問題はかなり明らかにされていますから情報フォンドを利用して直接解決策を得ることが可能となっています。

ステップ 5.1.

このステップの作業}:
標準解を使って問題(ステップ3.2.でIFR-2として表現した問題について、第4部で確認した物質・場資源を考慮に入れて考察してください)を解決できないか検討してください。

但書

40.標準解に戻って考える作業は、ステップ4.6.と4.7.とですでに実質的に始まっています。これ以前のステップでは、新たな物質やエネルギーを使わないで、問題状況の中に存在する物質・場資源を利用することについて考察することが主な狙いでした。既存の資源や派生的資源を使って問題を解決することができない場合には、新たな物質あるいはエネルギーを取り入れる他ありません。標準解の大部分はまさに、何かを追加するテクニックを示唆しているのです。

ステップ 5.2.

このステップの作業}:
これまでにARIZを適用して解決された問題でまだ標準解になっていないものの中で、現在の問題と似ているもの探してそれを手がかりに、問題(ステップ3.2.でIFR-2として表現した問題について、第4部で確認した物質・場資源を考慮に入れて考察してください)を解決できないか検討してください。

但書

41.発明レベルの難しい問題そのものには無限の多様性がありますが、問題の背景にある物理的矛盾の種類は比較的に多くはありません。

ですから、問題の多くは同種の物理的矛盾を含む他の問題と類比させることで解決することができます。一見したところでは問題は様々に全く異なるように見えます。しかし、物理的矛盾の水準までつきつめて考えると似ているところが見えてくるのです。

ステップ 5.3.

このステップの作業}:
標準点操作(表2「物理的矛盾の解決法」を参照のこと)を用いて物理的矛盾を解決できないか検討します。

ルール11.
IFRと一致するか、あるいは、IFRに極めて近い結果の得られる解決策だけを採用 することとします。

ステップ 5.4.

このステップの作業}:
「物理的効果インデックス」[訳注6]の利用
「物理的効果および現象活用のためのインデックス」の助けを借りて物理的矛盾を解消できないか検討します。

但書

42.「物理的効果および現象活用のためのインデックス」の各部は雑誌『技術と科学』(1981年No.1-9および1983年No.3-8)および『想像性の不遜な公式』(ペトロザヴォーツク、カレリア、1987)に公開されています。

訳注6:TRIZのツールの1つです。初め「物理的効果および現象活用のためのインデックス」という名称で登場したため省略して「物理的効果インデックス」と呼ばれることがあります。当初は問題解決に応用可能な物理的効果を用途(機能)別に整理したものでしたが、その後、化学的効果集、幾何学(形状の)効果集その他の様々な効果集が作られるようになりました。現在のTRIZコミュニティーではこれらを一括して単に「Effects」(=効果集)と呼ぶのが普通です。Effectsの内容は様々な専門家によって追加改良されているため世界のTRIZコミュニティーが一致して認める決定版と言えるものは見当たりません。

第6部 問題の変更または交換

  1. ステップ 6.1. 物理的解決策から工学的解決策への転換
  2. ステップ 6.2. 定式として設定した問題が複数の問題の組合せではないか確認
  3. ステップ 6.3. 問題の変更
  4. ステップ 6.4. 最小問題の公式表現の再検討

ステップ 6.1.

このステップの作業}:
問題の解決策が得られたら解決策の内容を物理レベルから工学レベルへと具体化させます。つまり、問題を解決する方法をしっかりと理解してその方法を実行に移す仕組みの骨格を描きます。

ステップ 6.2.

このステップの作業}:
解決策が得られていない場合には、ステップ1.1.で書き出した内容が実は複数の問題の組合せたったのではないか確認します。複数の問題の組合せとわかった場合には1.1.に含まれる問題を1つずつ取りあげて個々に解決します。(通常はもっとも重要な問題を1つ解決するだけで十分です。)

問題:「ごく細い金の鎖の一つひとつの輪を溶接できちんと閉じなければなりません。1メートルの鎖の重量が1グラム程度の細い鎖です。一日に何十メートル、何百メートルと溶接する必要があります。」

次のように問題を分解します:

  1. 多数の微細な溶接箇所にごく少量のはんだをどのようにしてもってゆくか?
  2. 鎖全体を傷つけずにはんだを溶かすにはどうすればよいか?
  3. どうすれば余剰のはんだを溶接個所から取り除くことができるか?

もっとも主要な問題はごく少量のはんだをどのようにして溶接箇所にもってゆくかです。

ステップ 6.3.

このステップの作業}:
解決策が得られていない場合には、ステップ1.4.に戻って別の技術的矛盾を取り上げます。


測定や検出に関連する問題では、別の技術的矛盾を取り上げるということは多くの場合、測定部分を改良するのをやめてシステム全体を変化させて測定そのものを不要にすることを意味します。(標準解4.1.1.

典型的な例 — 石油製品輸送用のパイプラインで一本のパイプを使って各種の石油製品をシリーズで順次輸送することに関連する問題の解決策。異なる石油製品の間の分離物質として液体を使う場合、あるいは、分離物質を全く使用しないで、ある石油製品と別の石油製品とを連続して輸送する場合の問題は、接触部間(製品と液体分離物質との、あるいは、2つの製品同士の接触部)の製品純度をどの程度まで確保できるかということです。

この問題は、当初は純度を「どう測定するか?」ということでしたが「どう変化させるか?」という別の問題に変わりました。どうすれば、石油製品が分離用の液体と全く混ざり合わないようにできるでしょうか?

解決策:分離用の液体と石油製品とが混ざり合うことについては気にしないことにしましょう。輸送した後での貯蔵タンクの中で、分離用の液体が自動的に揮発してガスに変わってしまうようにすれば良いのです。(詳細は次を参照してください:G. Altshuller『発明のアルゴリズム』第2版、モスクワ、1973、pp.207-209, 270-271。)

ステップ 6.4.

このステップの作業}:
解決策が得られていない場合には、ステップ1.1.に戻ってもう一度最小問題を記述しなおします。今度は、上位システムのレベルで最小問題を記述します。必要があれば、これを数回繰り返してください、つまりさらに、上位上位システムのレベルなどなどです。


典型的な例。気体を使った断熱防御服の解決策。(詳細は次を参照してください:G. Altshuller『発明のアルゴリズム』第2版、モスクワ、1973、pp.105-110。)

当初の問題は冷却服を作ることでした。しかし、許される重量の限界では求められる冷却能力を達成することは不可能でした。

問題は上位システムの問題に変化しました。そして、冷却服と呼吸保護装置の機能の両方をもった気体による断熱防御服が作られたのです。防御服は液体酸素を使います。まず、液体酸素が揮発して暖まる過程で外部の熱を奪い、そのあと気体となった酸素が呼吸に使われます。上位システムに移行することによって重量の制約を2・3倍拡大したのです。

第7部 物理的矛盾解消方法の分析

  1. ステップ 7.1. 得られた解決策の検証
  2. ステップ 7.2. 解決策の予備的評価
  3. ステップ 7.3. 解決策の形式的新規性の確認
  4. ステップ 7.4. 解決策を実地導入する場合の付随的問題の評価

ARIZ第7部の主な目的は得られた解決策の質を確認することです。物理的矛盾は「何も使わないで」ほぼ理想的に解消しなくてはなりません。中途半端な解決策を実地に導入してしまって後で一生後悔するよりは、得られた解決策と異なる——さらに強力な——解決策はないのか2・3時間を使う方が得策です。

ステップ 7.1.

このステップの作業}:
得られた解決策の検証
解決策によってあらたに導入されることになる物質とエネルギー(力)を個々に検証します。既存の資源や派生的資源を活用することで、これら新たな物質やエネルギーを導入しないで済ますことはできないでしょうか?自動制御物質を使うことはできないでしょうか?こうした検討の結果に基づいて、解決策実行計画を修正します。

但書

43.(問題状況に応じた)自動制御物質とは外部条件の変化に応じて自分の物理的特性を変化させる物質のことです。例えばキュリー点以上の温度になると磁性を失う物質です。自動制御物質を使うとシステムの構成を変化させたり、追加の機構を使わないでも測定機能を得ることが可能となります。

ステップ 7.2.

このステップの作業}:
解決策を予備的に評価します。

評価の基準:

  1. 得られた解決策はIFRのもっとも重要な要件(システム、あるいはシステムのある要素が自分で自動的に問題を解決しているかどうかという点です)を満たしていますか?
  2. 得られた解決策によってどのような物理的矛盾が解消されていますか?
  3. 結果として得られるシステムには制御しやすい要素が少なくとも1つは含まれていますか? その要素とは何ですか? 制御はどのように行なわれますか?
  4. 解決策は課題モデルを出発点とした一回限りの解決策になっていませんか? 何度も同じプロセスの生じる実際の条件でも役に立ちますか?

上のうちの1つでも基準を満たさない点がある場合にはステップ1.1.に戻ってください。

ステップ 7.3.

このステップの作業}:
解決策を既存の特許と比較してどのような形式的新規性があるか確認してください。

ステップ 7.4.

このステップの作業}:
解決策を実地に導入する場合にどのような付随的問題が生じるでしょうか? 可能性のある問題を書き出してください。研究、開発、設計、製造、生産、経理、組織などどのような問題でも全てリストアップしてください。

第8部 解決策の活用

  1. ステップ 8.1. 上位システムに求められる変化?
  2. ステップ 8.2. システム(上位システム)のあらたな用途
  3. ステップ 8.3. 解決策の他の問題へ転用

本当に良いアイデアは個別の問題を解決するだけでなく、なんらかの類似性がある多数の他の問題解決に汎用的な手がかりを与えてくれるものです。ARIZ第8部の目的は問題解決によって得られたアイデアがもつ資源を最大限に活用することです。

ステップ 8.1.

このステップの作業}:
解決策でシステムが改良されることによって、システムを内蔵する上位システムはどのように変化しなければならないのかを明らかにします。

ステップ 8.2.

このステップの作業}:
改良されたシステム(あるいは上位システム)を何らかの新しい用途で使用することができないか確認します。

ステップ 8.3.

このステップの作業}:
解決策を他の問題解決に活用します。

  1. 今回の問題解決で得られた解決策の原理を一般化した表現で記述します。
  2. 他の問題を解決するときに、今回の解決策の原理をそのまま援用できないか検討します。
  3. 原理を逆転させて適用することはできないか検討します。
  4. 解決策の原理についてモルフォロジー分析を行ないます。例えば、まず今回の解決策の原理に基づいて、使われた要素の組合せを一般化させた直交表を作ります。例えば「部品の配置 X ワークの物理的状態(相)」、「使用されるエネルギー X 外部環境の物理的状態(相)」といったようにします。次に、縦軸、横軸に適合する具体的な選択肢を記入します。(例えば:部品の配置=上下、左右、内外、裏表……、ワークの物理的状態=固体、液体、気体、エマルジョン……)。その上で、表の交点を一つひとつ検討します。今回の解決策で実際に使った各要素と異なる別の組合せの中に、現実的に可能な組合せがあれば、解決策の原理をその組合せに当てはめて考えると、新しい問題を解決できないか検討します。現実的に可能な組み合わせ全てについて検討します。
  5. システム(あるいは、その主要な構成要素)の大きさを変化させて解決策の原理を適用することを検討します。大きさは極端に変化させるところまで考えてください。小さい方向では近似的にゼロの状態まで、大きい方向では無限大まで考えてください。

但書

44.当面の問題を解決するだけが課題ではない場合にはステップ8.3.をa.からe.まで完璧に行なうことによって当初の問題解決で発見された原理を手がかりとした新しい「理論」の構築につながる可能性があります。

第9部 問題解決プロセスの分析

  1. ステップ 9.1. 実際の問題解決の流れと理論との比較
  2. ステップ 9.2. 問題解決の結果とTRIZの情報フォンドの資料との比較

ARIZを用いた問題解決の一回一回が創造的能力を高めてくれるはずです。しかし、そのためには問題解決の流れを徹底的に分析することが欠かせません。こを行なうことがARIZの最後の段階である第9部の狙いです。

ステップ 9.1.

このステップの作業}:
実際に行なった問題解決の流れをARIZに沿った理論的な流れと比較します。差異がある場合にはその内容を記録します。

ステップ 9.2.

このステップの作業}:
今回行なった問題解決の結果をTRIZの情報フォンド(標準解、発明原理、物理的効果インデックス)と比較検討します。今回の解決策の考え方が情報フォンドに含まれていない場合には、その内容を予備的情報ストックに記入します。

注意!
ARIZ-85Cは既に数多くの問題と照合して検証されました。TRIZの教育に例題として使われる問題については実質的にすべてについて検証したといえます。時々、これを忘れてたった一件の問題解決の経験を根拠として「気軽に」ARIZの改良提案をする人たちがあります。その問題一件について言えば提案されたような変更はありうるし、良い(許容できる)かもしれません。しかし、こうした変更はほぼ例外なく、その問題一件の解決を容易にする代わりに他の全ての問題解決を難しくしてしまうのです。

全ての改良提案はまずARIZとは別のところで(例えば「小さい人」法と組み合わせるなどして)試してみてください。その後、一件の改良提案当たり少なくとも20-25件のかなりの難問についてARIZに取り入れた形で試験してください。

ARIZは常に改良されています。そのためにはARIZに新しいアイデアが流れ込んでくることが必要です。とはいえ、新しいアイデアを取り入れるにあたっては、前もって徹底的に検証しておくことが欠かせないのです。

表1

問題モデルにおける対立関係の典型的スキーム

訳注:{ }内は本文記載のレファレンスを手がかりに訳者が出所から転載したものです。

1.相互作用

表1図1

АはБに対して有益な作用(実線の矢印)を与える、しかしその一方、常時あるいは時々逆向きの有害な作用が発生する(波線の矢印)。

有益な作用はそのままで有害な作用を取り除くことが求められる。

  • 固まったコンクリートから型枠を取り外す問題(『技術と科学』1981年、No.5-7)
    {液状のセメントミックスから(ばらばらに作って組み合わせるのではなく)一体型のコンクリート製品を作る際には、セメントミックスを固める際に型枠を使うことになる。型は木の板から作るが、固まったコンクリートが型に張り付いて剥がせないので、製品を型枠からはずす際に型が壊れてしまい一回しか使用できない。型枠と製品との間に潤滑オイルを入れたり、型枠に塗装をしたりしても役に立たない。型枠を鉄板で作れば繰り返して使えると考えられるが重くなり作業がしずらい。木製、鉄製の長所を兼ね備えていて、それぞれの短所のない型枠を作りたい。}
  • 過電流遮断装置の問題(『技術と科学』1981年、No.3-5)
    {電気回路をショートから保護するために3段式の電流遮断装置が使われている。第1段はバイメタル式で規定の2倍以上の電流が流れたときに作動するが電流を遮断するまでに100秒かかる。第2段は電磁石で動く方式で規定の10倍以上の電流で反応するが電流遮断までに0.1秒かかる。第3段は電磁誘導方式で規定の100倍以上の電流が流れると0.003秒で遮断する。個々の装置は規定どおり適切に作動するが、問題は第1段のバイメタルが規定の100倍の電流に耐えられないことである。0.003秒という短時間でも高温になり大きく変形するため2つの金属の張り合わせ面がはがれてしまう。装置を複雑化、重量化、大型化することなく改良することが求められる。}
  • 溶鋼撹拌の問題(『技術と科学』1981年、No.8)
    {溶けた鋼をスラグと混ぜ合わせるには同じ素材で作った棒でかき混ぜる、しかし、棒は短時間で溶けてしまうため不便である。非溶解性金属で作ると高価になるし、セラミック製も強度が不足で簡単に壊れてしまい、不純物を出すので適当でない。どうすればよいか?}

2.併発作用

表1図2

АのБに対する有益な作用が、何らかの形で(例えば、プロセスの別々の段階で同一の作用が有益であったり有害であったりする)おなじБに対して有害に作用する。

有益な作用はそのままで有害な作用を取り除くことが求められる。

  • 溶解した合金に粉末状の非磁性添加剤を混入させる問題(『技術と科学』1980年、No.8)
    {合金に非磁性の粉末状添加剤を混入する必要がある。不活性ガスを利用する方法が使われている。粉末添加剤を不活性ガスと共に溶けた合金を入れた容器の底から吹き上げる方法である。この方法には1つ欠点がある。不活性ガスは液体金属の中をぶくぶくと上がって最後は上に抜けてゆくが、その際に粉末添加剤の一部が一緒に抜けてしまうことである。}

3.併発作用

表1図3

АはБの一部分 (Б1) に対して有益な作用を加えるが、同時にБの他の部分 (Б2) に有害な作用を及ぼす。

Б1に対する有益な作用はそのままで、Б2に対する有害な作用を取り除くことが求められる。

  • 「波の上を駆ける女性」の問題(『技術と科学』1981年、No.2)
    {ロシアの女流詩人フレジ・グラントの詩「波の上を駆ける女性」の記念碑を作ることになり、彫刻家は詩の主人公の姿を正確に描き出そうとした。しかし石で作る彫刻で若い女性が駆ける波を表現することは難しい。彫刻家は思案の末、彫刻の台に青と白のまじった青金石を使うことで泡立つ海水を表現することにした。しかし工房に運び込まれたのは不恰好な青金石だった。これから平らな直方体の台の形に仕上げる必要がある。一番早い方法はバーナーを使って石を溶かす方法だ。早速はじめたが、しばしば作業を中断して形や表面のなめらかな仕上がりをチェックしなければならないため作業に時間がかかる。納期がせまっているがどうしたらよいだろうか?}

4.併発作用

表1図4

АはБに対して有益な作用を加えているが、その同じ作用がВに対しては有害な作用となっている(なお、А、Б、Вは1つのシステムを形成している)。

有益な作用はそのままとし、システムを解体させることをせずに有害な作用を取り除くことが求められる。

  • 成層圏気球のキャビンの問題(『技術と科学』1980年、No.2)
    {訳者:この例は本文のレファレンス箇所に見当たりません。著者の記憶違いの可能性があります}

5.併発作用

表1図5

АのБに対する有益な作用が、自分自身に対する有害な作用を伴っている。(これによって、Аが複雑化することを含む)

有益な作用はそのままで有害な作用を取り除くことが求められる。

  • はんだこての問題(『技術と科学』1980年、No.4)
    {今、こて先が一定のキュリー点をもつはんだこてをプロトタイプとしよう。このはんだこてを改良する必要がある。}

6.共存不可能な作用

表1図6

АのБに対する有益な作用は、ВのБに対する有益な作用と両立できない(例えば、加工と測定とが両立できない)。

АのБに対する作用を変化させずに、ВのБに対する作用(点線の矢印)を可能にする。

  • 研磨ディスクを使用した研磨作業の最中にディスクの直径を測定する問題(『技術と科学』1980年、No.7)
    {これは、研修用の問題。要点は、鋼製のパイプの内側を研磨ディスクで研磨する作業の最中にディスクの直径を連続的にリアルタイムで測定することのが難しいということ。どうすればよいか?}
  • 映写機と気密ヘルメットの問題(『技術と科学』1981年、No.9)
    {宇宙服の気密ヘルメットをかぶっていると、映写機のファインダーを目に直に付けることができない。しかし、宇宙空間でヘルメットを外すわけにはゆかない。どうすればよいか?}

7.不完全な作用、あるいは、作用の不在

表1図7

АはБにある作用を加えているが、同じ作用を2つ加えることが求められる。あるいは、АのБに対する作用が得られない。時には、Аは存在せず、Бを変化させる必要があるが、どのようにすればよいのかが不明である。

極力シンプルなАを前提として、Бに対する必要な作用を可能にする。

  • 圧延ローラーの潤滑の問題(『技術と科学』1981年、No.7-8)
    {鋼板の圧延に使用するローラーを潤滑する方法を考案したい。潤滑油を均一に供給しながら、一方では周囲に跳ね飛ばさないようにする必要がある。現在の構造を大きく変更することは許されない。}
  • 高圧を得る問題(『技術と科学』1979年、No.6)
    {2つの密閉された円筒形を平行して横に並べた形の高圧装置がある。容器は極めて頑丈な素材で作られている。2つの円筒の内部は液体で満たされている。それぞれの円筒の真ん中に軸が通っている。2つの円筒の間はスチールベルトが通るぎりぎりの厚さのすきまでつながれていて、一本の同じベルトの両端が2つの軸に固定され、左側の軸にはベルトが厚く巻きつけられている。右側の軸を回して左からベルトを巻き取ってゆくと、右側の円筒内部の空間は徐々に狭くなってゆくため高圧が得られる。ベルトが通る隙間のシールが完璧ならばこの仕組みで最大15000気圧が得られる。改良のアイデアは無いか?}

8.「沈黙」

表1図8

А、БあるいはАとБとの相互作用について情報が得られない(波点線の矢印)。時にはБは存在しない。

必要な情報を得ることが求められる。

9.(過剰な場合を含む)制御不能な作用

表1図9

АはБに対して制御不能な(例えば常時絶え間なく)作用を加えている。制御された作用が必要である(例えば、変化する作用)。

АのБに対する作用を制御可能とすることが求められる(一点破線の矢印)

  • バケットから一定量の溶融金属を注ぐ問題(『技術と科学』1979年、No.10)
    {取鍋の底から溶融金属注ぎだす。取鍋の中の金属は徐々に減ってゆく(したがって底部の圧力は変化してゆく)が注ぎだす金属の量は一定にしたい。弁やクレーンを使うことはできない。また、注ぎ口は常に開いていなければならない。どうすればよいか?}
  • アンプルの問題(『技術と科学』1981年、No.9)
    {次のような内部空間の体積を増やせるアンプルを考案してください:
    用途は宇宙空間で合金を作る試験です。地上でアンプルの内部を固体の素材金属——複数——で充填します。宇宙空間で金属を溶かしそれが冷えて固まると合金ができます。このプロセスで金属の溶ける時に体積が増します。アンプルのガラスはその圧力に負けて割れてしまいます。どうすればよいでしょうか? 始めにアンプルの中にガスを入れておくことはできません。}

表2

物理的矛盾の解決法

原理
1 対立する特性を空間で分離する ソ連邦発明者証 No.256708:鉱内の粉塵を抑えるために水をまく際、水滴が細かいほど塵を捉える効果が高いが霧が生じて視界が悪くなる。これを避けるために、噴霧する際に中心部の細かい水滴の周囲を大きい水滴のコーンで包むように噴霧する
2 対立する特性を時間で分離する 標準解(76の標準解体系による)2.2.3.2.3.1.の誤りではないかと思われる}
ソ連邦発明者証 No.258490:溶接棒をテープ状にして溶接シームの幅に合わせてテープの幅を変化させる
3 システム移行 1a:
同種あるいは異種のシステムを組み合わせて上位システムに移行させる
標準解3.1.1.
ソ連邦発明者証 No.722624:圧延鋼のスラブを移動させる途中で温度が下がらないように次々と連続して流す
4 システム移行 1b:
システムの反システムへの移行、または、システムと反システムとの組合せ
標準解3.1.3.
ソ連邦発明者証 No.523695:傷口に異なる型の血液を染込ませたガーゼを当てる止血法
5 システム移行 1c:
システム全体としては特性Pをもち、システムの一部が特性反Pをもつ
標準解3.1.5.
ソ連邦発明者証 No.510350:万力で複雑な形状の部品を固定する際に使用する万能治具:細い円柱形状の棒を並べたもので、個々の円柱は硬いが、全体としては柔軟に部品の形状に合わせることができる
6 システム移行 2:
ミクロレベルで作用するシステムへの移行
標準解3.2.1.
ソ連邦発明者証 No.179479:通常の機械式に替えて温度を利用するカラン(活栓)。温度膨張係数の異なる2つの素材を組み合わせる。加熱すると隙間が生じて栓が開く。
7 相転換1:
システム、あるいは、外部環境の一部の相態を替える
標準解5.3.1.
ソ連邦発明者証 No.252262:坑内で圧搾ガスを使用する現場への原動エネルギー供給法。液化ガスにして現場まで届ける
8 相転換2:
システムのある部分を二重の相態化(この部分が条件に従ってある相態から別の相態へと変化する)
標準解5.3.2.
ソ連邦発明者証 No.958837:ニッケル・チタン{形状記憶}合金のプレートを多数取り付けた熱交換装置。温度が高くなるとプレートが立ち上がり冷却面積が増加するようにする
9 相転換3:
相転換に伴う現象の利用
標準解5.3.3.
ソ連邦発明者証 No.601192:凍結した荷物を輸送するための装置。サポートの部分が氷の棒で作られている(移動させると氷が溶けるので摩擦が小さくなる)
10 相転換4:
単相の物質を二相物質に替える
標準解5.3.4.および5.3.5.
ソ連邦発明者証 No.722740:部品仕上げ研磨法。研磨材は液体(液状の鉛)と磁性の研磨粒子からなる
11 物理−化学転換:
分解−化合、イオン化−再結合を利用して物質を発生/消滅させる
標準解5.5.1.および5.5.2.
ソ連邦発明者証 No.342761:木材をアンモニアによって可塑化するために、摩擦によって分解するアンモニア塩を木材に浸透させる

付録1.ノロ搬送の問題

高炉から出るノロ(溶解状態での温度1000℃)は鉄道貨車に載せた耐熱容器に入れて処理施設まで搬送する。搬送中に冷たい外気に触れるため溶けたノロの表面に固まったノロの厚い層が形成される。ノロの1/3はこのようにして固まってしまう。ノロを降ろす際には固まった層を砕き、穴を開けて液状のノロを流しだし、その後で固まった部分をはがさなくてはならない。ノロが冷えないように容器にふたをかぶせるアイデアがあるが、重たいふたを載せたり外したりするのに手間がかかる。どうすればよいか?

{この後に原文で約800ワードの模範解答が続きます。模範解答の邦訳をご希望の方はARIZのステップに沿って自分で考えた解答を「お問い合わせ」のページからお送りください。折り返し返送いたします。ただし、模範解答はARIZのステップを完全にカバーしているわけではありません、また、管理人の都合により返送が遅くなることがあります。模範解答の内容、翻訳の質、返送の不手際いずれについてもクレームにおこたえすることはできません。あらかじめご承知おきください。}

付録2.花粉つけの問題

植物の人工授粉を行なう際にふいごで風を起して花粉を移動させる。しかし植物は進化の過程で強い風が吹くと花{弁}が閉じる習性を得てしまっている。穏やかな風を送ったのでは花粉が十分に飛んでくれない。どうすればよいか?

{この後に原文で約600ワードの模範解答が続きます。模範解答の邦訳をご希望の方はARIZのステップに沿って自分で考えた解答を「お問い合わせ」のページからお送りください。折り返し返送いたします。ただし、模範解答はARIZのステップを完全にカバーしているわけではありません、また、管理人の都合により返送が遅くなることがあります。模範解答の内容、翻訳の質、返送の不手際いずれについてもクレームにおこたえすることはできません。あらかじめご承知おきください。}

付録3.パラシュート模型の問題

渦の発生状況を調べるためにパラシュートの模型(傘、など)をガラスのパイプに入れ、水を流す。観察は肉眼で行なう。しかし、無色の水を背景として無色の渦を観察するのは難しい。水に色を付けてしまったのでは観察はさらに難しくなる。黒い水の中で黒い渦が発生しているのでは何も見えない。見えるようにするため模型に水溶性の塗料を薄く塗り、透明の水の中で着色された渦が発生する状況を観察する。しかし、塗料は短時間ですべて溶けて無くなってしまう。模型に塗料を厚く塗ると、模型の形状が変わってしまうので観察の意味が失われる。どうすればよいか?

{この後に原文で約500ワードの模範解答が続きます。模範解答の邦訳をご希望の方はARIZのステップに沿って自分で考えた解答を「お問い合わせ」のページからお送りください。折り返し返送いたします。ただし、模範解答はARIZのステップを完全にカバーしているわけではありません、また、管理人の都合により返送が遅くなることがあります。模範解答の内容、翻訳の質、返送の不手際いずれについてもクレームにおこたえすることはできません。あらかじめご承知おきください。}

付録4.微粒子検出の問題

様々な目的で不溶性で不純物をほとんど含まない、光学的清浄度の高い液体が必要になる。大きな粒子は光が反射するので観察できる。しかし、ごく小さい粒子(30ナノメートル以下)は既知の光学的方法によっては観察することができない: このような微粒子は(レーザー光ですら)ごく少量しか反射しないので観察するには不十分である。

液体中に微粒子が存在するか否か、あるとすればどれほどあるのか判定できる光学的方法が必要である。どうすれば良いか。

なお、粒子は磁性をもたず、磁化させることはできない。

{この後に原文で約550ワードの模範解答が続きます。模範解答の邦訳をご希望の方はARIZのステップに沿って自分で考えた解答を「お問い合わせ」のページからお送りください。折り返し返送いたします。ただし、模範解答はARIZのステップを完全にカバーしているわけではありません、また、管理人の都合により返送が遅くなることがあります。模範解答の内容、翻訳の質、返送の不手際いずれについてもクレームにおこたえすることはできません。あらかじめご承知おきください。}

付録5.バクテリア検出の問題

水の中にどの程度のバクテリアが含まれているか判定する作業は次のように行なわれる。まず、試料の水にごく小さな孔がたくさん開いている金属板を入れる。次に金属板を取り出してその片面を『吸い取り紙』に付ける。吸い取り紙は付けた面だけでなく反対側の面の水も吸い取ってしまう。{孔はごく小さいため}バクテリアは{通り抜けることができず、}金属板の第2(吸い取り紙の反対側)の表面に捉えられる。こうして『収獲』が終わると、バクテリアの数を一匹ずつ数える作業に移る(バクテリアの数が水の清浄度の指標となる)。バクテリアを数える作業は顕微鏡を使って丹念に行なう時間のかかる作業である。顕微鏡のない現場でこの作業を行なうにはどうすればよいか?

{この後に原文で約500ワードの模範解答が続きます。模範解答の邦訳をご希望の方はARIZのステップに沿って自分で考えた解答を「お問い合わせ」のページからお送りください。折り返し返送いたします。ただし、模範解答はARIZのステップを完全にカバーしているわけではありません、また、管理人の都合により返送が遅くなることがあります。模範解答の内容、翻訳の質、返送の不手際いずれについてもクレームにおこたえすることはできません。あらかじめご承知おきください。}

書誌
G.S.アルトシューラ「技術難問解決アルゴリズム ARIZ-85C」
『「科学技術問題解決法」セミナーの聴衆のための教材』
レニングラード:レニングラード金属工場、1985年
(Альтшуллер Г.С. Алгоритм решения изобретательских задач АРИЗ-85В
// Методические разработки для слушателей семинара “Методы решения научно-технических задач”.
— Л.: Ленингадский металлический завод, 1985.)

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