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TRIZの古典

アルトシューラ
「TRIZの講習に備えた真剣な研鑽の必要性について」

この論文は The Official G.Altshuller foundation の許可に基づいて掲載されたものです。(下記のURLはファウンデーションのサイトにリンクされています。書誌詳細はページ末尾

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TRIZの講習に備えた真剣な研鑽の必要性について

G.S.アルトシューラ

 最近私はシンフェローポリとチェリャービンスクのセミナー[訳注]の参加者の多数から近いうちにTRIZの講習を行うという手紙を受け取りました。どれもうれしい手紙です。その一方で手紙の幾つかからは計画中の講習を気楽に考えていること感じられました。教えることに備えて自分でどれほどの準備をしているかについて書いてないのです。この機会に極めて大切な幾つかの点について注意を喚起しておきたいとおもいます。

  1. 2週間のセミナーはTRIZ研究への導入部にすぎません。こうしたセミナーの後では必ず集中して自己研鑽を行う必要があります(最低50−60時間)。たとえ短いものであっても、自分で講習を実施することが許されるのは自習を行った後のことです。
  2. 研鑽の第一の方向はTRIZに関する論文や書籍を研究することです。必ず『厳密な学としての創造性』一冊は読み上げなくてはいけません。セミナーで受け取った標準とARIZ−85Cについての資料は詳細に研究しなくてはいけません。以上は絶対必要な最低限です。TRIZに関する他の本も是非とも読んでおくことが望まれます。
  3. 研鑽の第二の方向は講習の計画を立てることです。考え抜いた詳細な計画なしに講習を行うことは決して許されません。2時間の講習の計画でしたらタイプで文字の部分が少なくとも2−3ページです。質問集、講習をどう始めてどう終えるか詳細な「シナリオ」、講習で使う「例」の完全なリスト、結論の一言一句を書いたメモ(講習の過程の中間的な結論を3−4個と最終的な結論)。計画には主な課題を完全な文章で書いたものを添えなくてはいけません。課題は複数準備してセミナールームで選択するものと、宿題とするものとを含みます。課題の条件は言い直してはいけません。これを行うと、必ず何かが曲げられるか、何かが抜けることになってしまいます。
    どの講習でも参加者は次の3種類の「ごちそう」を受け取ることにならなくてはなりません;
    1. 理論に関するもの。つまり、技術システムの進化の法則について、ARIZについて、標準について、ルールについて、解法について、良くある間違いについて、など。
    2. 蓄積された情報集に関するもの。つまり、技術開発上の優れた解決策の例、物理的・化学的・幾何学的効果についての情報、特異な特性を持った素材(ニチノール、磁性流体、液晶など)やありふれた素材の変わった使い方(例えば、βスズ(白色スズ)がαスズ(灰色スズ)に転移する際の圧力の利用)
    3. 「人間的要素」について。創造的人格の特性、創造的な人生の例。
    正しく立案された講習計画には、方法、情報集、創造的な人生スタイルという3つの側面全てが考慮されています。
  4. TRIZを教えることは一歩一歩進めなくてはいけません。最初は紹介プログラム(20時間以内)から始めるべきです。始めから現実の問題の解決に取り組む本格的な研修を計画してはいけません。
  5. 紹介プログラムでも、講習の参加者に研修資料を配布することは不可欠です。最低源は標準とARIZ−85Cの本文です。資料は誰かの約束に頼るようなことはしないで、事前に準備しなくてはいけません。
    また、ノヴォシビリスクの出版社に『アイデア発見』を注文(出席者分プラス将来に向けた控え)することもできます。価格は70カペイカ、出版は第4四半期、印刷部数は35,000部(殆ど全て予約済み)です。
  6. 自分のカード作り(個人的データベース)は不可欠です。教師として始めたばかりのうちはTRIZについて既にまとめられている素材を利用することができます。しかし後回しにせず、すぐに個人的データベースの蓄積に取りかかるべきです。
    始めのうちは分類の心配をしないで、すべて「ひとやま」にまとめるかたちでも良いのです。まず優先して集めなくてはいけないのは、技術システム進化の法則の適用/非適用・かく乱、標準、ARIZ、物理・化学・幾何学効果の例を集めるべきです。個人データベータベースに非常に大切なのは解決済み・未解決の興味深い課題の蓄積です。方法に関する情報と情報集に加える情報とはこのように「全ての前線にわたって」進めることができます。一方で「人間的要素」に関する情報の収集は的を絞って行うことが望ましいと言えます。対象とする人物を選び、資料の収集を始めるのと同時に6つの基本特性に即してその人物の分析を行います
    作業結果がタイプで20−30ページになった場合は、複製をつくってTRIZに関する資料の共有情報集に含めることができます。
  7. 書籍、論文、標準とARIZとのテキスト以外に複写あるいはタイプ印刷の資料となっている大量のTRIZ共有情報集があります。この情報集はTRIZ教師や研究者の能力向上に極めて役に立ちます。共有情報集にはTRIZの研究、講習を行った経験に関する資料、創造的人物の伝記、指導法の資料などが含まれます。共有情報の資料は、通常、TRIZ研究者の登録された住所あてに送付されます。 共有資料は(一定の割合で部数を増やして返却する条件で)「利子付きで」一時的に借り出すことができます。教師同士の間の連絡網は徐々に確立されています。セミナーに揃って参加することによって連絡網作りが促進されます。教師は可能な限り(最低で2年に一度)セミナーに参加することが不可欠です。1985年にはペトロザヴォーツク(7月)とノヴォシビリスク(12月)で教師と研究者向けの特別セミナーが開催されました。
  8. 教師と研究者の仕事の成果は彼ら同士の相互作用に大きく依存しています。まず、同じ都市の枠内で。1つの都市に1つの(あるいは複数の競争する)TRIZセンターがあることが大いに望まれます。

G.アルトシューラ

[訳注]TRIZの教師を育成するためのセミナーと想定されます

書誌
G.S.アルトシューラ「TRIZの講習に備えた真剣な研鑽の必要性について」、1986年
(Альтшуллер Г.С.
О необходимости серьёзной самоподготовки к занятиям ТРИЗ.
— 1986.)

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