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ポジショニングの試み(レジュメ)

I. 前置きの前置き:TRIZと私

  • 大学でTRIZ普及担当部門のお手伝い (2001)
  • 内容と売り文句との間に存在する違和感
  • 興味深い考え方が散見するものの説明ストーリーに穴ばかり
  • やっている人たち(アルトシューラに学んだロシア人達)の何人かは極めてまとも。しかも話が面白い。苦労の経験が豊富。苦労にどう対処したのか、独創的でかつ説得力がある。これらの人を見てTRIZには何かの「当たり」があると考えた。
  • (TRIZの価値を売り込む前に)自分にTRIZの価値を納得させられる説明を探すことを当面の目標とした

II. 説明の前置き:人が困る時(思考の面で見た分析)

1 困る理由

  1. 状況に関与している個別の要素(人・モノ、力・作用、空間、時間、情報、機能など)についての知識不足
  2. 状況に関与している諸要素の間の関係の理解不足
  3. 要素や関係についての人の認識のあり方の特性についての理解不足
  4. 状況を改善する目標、即ちある具体的な状況において何が価値なのかについての無知
  • 概括的にいえば、人類の知識は始め 1. の関連で蓄積されたが、16~17世紀ごろ科学の始まりとともに 2. が強く意識されるようになり、19世紀になって 3. の観点が学問の対象となった。TRIZの功績の1つは 4. に関連して価値の増加を客観的な形で扱う手段を発見したことと思われる。
  • TRIZのもう1つの功績は、困る理由 1.~4. すべてに対処する手段を含む方法の体系を目指したこと。(これがTRIZを複雑にし、判りにくくしているが、これを避けたのではTRIZの力が減殺されてしまう)

2 困ったときに対処するアプローチ

  1. 対処策を直接探す(究極の試行錯誤)
  2. うまくゆきそうな対処策の(様々な程度に)一般的な(出来合い)モデルを探す
  3. 状況を一般化し、その一般化した状況に有効なモデルを開発する
  • ここで「モデル」とは状況を望ましい方向に変化させる対処策の類型。数学の「公式」なども該当する。
  • 状況によって3つのアプローチを使い分けるのが合理的だが、人によってはほとんど 1. のアプローチばかり使っている。大半の人は 1. と 2. を使い分けている。しかし、2. のアプローチについては、使いこなすことのできるモデルの範囲や数・多様性がその人の思考の生産性に影響を与えると思われる。TRIZの歴史は主に 2. のアプローチで具体的状況において利用出来るモデルの探索範囲を拡大する方法や、汎用性の高い新しいモデル体系を提唱することから始まった。
  • しかし、社会が急速に大きく変化してゆく現代は 3. の能力が求められる時代である。TRIZはその発展の歴史の中で 3. に方法的な根拠を与える可能性や、3. を行う能力を開発する可能性と手段を見いだしてきたように思われる。

III. 現在のTRIZの位置づけ(私なりに)

  1. 人が困る理由の構造を踏まえて、具体的な状況に応じて必要な対処策を講じられる技能を育成する教育体系(を作るための土台)
  2. 実際の困った状況に対処するための方法の体系(を作るための土台)

IV. 現在TRIZ(ベストプラクティス)が持っている方法

  1. 状況に関与している諸要素の中から状況改善にとって役に立つ意味を発見するための諸ツール(資源探索の手引き)
  2. 諸要素間の関係を分析する諸ツール(TRIZ以外の方法がもっているツールを積極的に消化中)
  3. 諸要素、関係について十分に理解することを妨げる人の認識のクセを取り外すための諸ツール(人の認識のクセを積極的に利用するためのツールは意識的には使われていないように見えるので、ここを強化する必要があると考えている)
  4. 人にとっての「より良い」とは何かの理論的体系。既存の状況を人にとって「より良い」状態に変化させるための「オペレータ」集。(「オペレータ」はイメージを変化させる思考操作の類型。現在のTRIZは「オペレータ」に関連して多数の提案が並立している状況)
  • 以上の適用分野:
    思考を必要とする人の現実的活動全般について、
    1. 求められる具体的な目標を実現する有効な方法の発見
    2. 原因の判らない現象の原因と発生メカニズムの解明
    3. 既存あるいは構想としてのシステム(製品、技術、制度、組織、その他の仕組み)に潜在するリスクの予測(+事前対応)
    4. 将来何が価値とされるかについての予測(+事前対応)
  1. TRIZが示唆する「有効に思考する技能」を育成する教育体系(試行中)

V. TRIZの活かし方についての独断的サジェスチョン

  1. 本当の味は困難な状況に素早く対処できる人を育てること
  2. (方法としてみた場合)TRIZと既存の方法との間の違いが眼に見えるようになるのは、難しい状況に対処する時。それもTRIZを使いこなせる人がいてのこと。結局、人を育てることが必要。
    • 手前味噌:私のTRIZの師匠であるボリース・ズローチン、アラ・ズズマン等が作ったIWBというソフトウエアは、上で説明した状況を踏まえて含まれている内容・構造を理解して使えばTRIZの習熟に必要な時間を短縮してくれるのではないかと考えている。といっても、5年かかるところが2年といった効果かもしれない。
  3. TRIZを使いこなせる人を雇う

以上

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