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TRIZの古典

アルトシューラARIZの使い方

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ARIZの使い方

 九月には多くの都市でTRIZの学習が再開されます。私のところに届いた情報によれば、今年度は新しい講師が教えるグループが数多くあるとのことです。これをふまえて、ARIZの使い方を教えることのもつ大切な特徴について皆さんの注意を喚起したいと思います。講師の中には「ARIZの練習問題」を課題として与えて解答を評価する際に「正しい答えを得ることが出来たか、否か?」というただ一点を基準とする人がいます。このやりかたは正しくありません。現在の新しいARIZは難しい、通常のやり方では解決できない問題を解決するために作られています。ARIZを適用する始めの段階では、問題はしばしば不完全な形で、あるいは、誤った捉え方をされた形で提示されています。時には問題の条件の中に——何らかの先入観によって——「どういう結果を得なくてはならないか」自体が誤って示されていることがあります。一例として例の砕氷船の問題を思い出してみましょう。はじめの段階では、課題の条件として「氷を砕く」能力を強化することが求められていましたが、実際に必要だったのは「氷を砕かずに」船を進めることだったのです。また、ARIZに沿って分析を進める過程では、しばしば、問題を解決する立場の人が知らないような物理的効果を利用しなければならないことがあります。この場合には、調査をしたり、文献をひっくり返したりしなければなりません。こうしたことすべてによって、ARIZを使った問題解決が時間のかかる、手順を追った作業になっているのです。問題モデルを作った段階ではまだ解決策は得られていません。しかし、既に解決策に一歩近づいているのです。最終理想解を規定の表現で書いた、この段階でも解決策は得られていません。しかし、さらに一歩解決策に近づいたのです。ですから研修の参加者に向かって「ARIZを使ってあなたが得た解答は間違っています。だから、あなたはARIZを使うことができません」と言っては、いけないのです。そうではなく「あなたが作った問題モデルは正しくできています。よくやりました。これで、問題は一部解決されました。ただ、最終理想解の作り方が不正確でした。ARIZ第2部の始めに戻って、もう一度分析をやり直してください」と言わなくてはなりません。

 これは大変重要な点です。ARIZを使って作業を行うときには、ある時点でまだ解決策が得られていないで、次の瞬間に突然解決策が得られるということは、(突然の「ひらめき」に賭けて試行錯誤をするときには典型的なことですが)あり得ないのです。(より正確に言えば、大変易しい問題に取り組んだ場合にはあり得ます。その場合は、例えば類比思考が十分に役立つというようなケースで、ARIZのような重装備を総動員する必要のないケースです。)ARIZを適用して問題を解決する際には解決策は徐々に育ち、明らかになってくるのです。さあ、問題モデルを作った、これで、例えば、解答策までの10%、さあ、物質・場資源が出揃った、もう10%、というわけです。こうして70%–80%までゆくと、突然解決策に出会う可能性が急に大きくなってくるのです。(こうして、突然得られる解決策も「ひらめき」ではあります。ただし、これは「ARIZ流」のひらめきです。つまり、計画的に準備されたひらめきです。ちなみに付け加えると、「ひらめき」の要素が100%全く無しに解決策が得られるというケースもまれではありません)。

 実績に基づいていえることですが、ARIZを研修で理屈として学んだだけの段階でも参加者は通例、大きな間違いをしないで問題モデルを作ることができます。次に、一人でARIZの本文を読んで付録の問題を検討した後では普通、物質・場資源と最終理想解とを正しく特定することができるようになります。まさにこの段階で、講師のサポートが必要になるのです。この際、講師にとって「正しい解答が得られたかどうか」ということは最もどうでも良いことです。ここでの講師にとっての課題は次の3つです:

  1. 一人一人の参加者の主な限界(つまづいているところ)を理解する
  2. この限界を少しずつ動かしてARIZによる分析の最後まで近づけてゆく
  3. 見落とした(解決策に近づく)可能性について議論をすることを通じて、すでに基本的にはマスターしたと考えられるステップの理解を深めてゆく

(G. Altshuller. 1986年8月10日)

書誌:
G.アルトシューラ「ARIZの使い方」、1986年8月10日付文書
(Альтшуллер Г. Применение АРИЗ.
— Информация от 8/10/1986.)

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