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はすにらみTRIZ

オープンタスク

閑話休題

TRIZのツールを使った考え方と解答例(2016年)

2016年1月のオープンタスク (1) : 城と大砲

1.課題

この問題が提起している課題は明確です。

  • 状況:新式の大砲をもって攻撃してくる強力な敵軍から街を守らなくてはならない
  • 問題:石の城壁は大砲から打ち出される鉄の砲弾を止める有益な働きを持っているが、砲弾の衝撃を受けて城壁自体が壊れてしまう欠陥がある
  • 目標:新式の大砲(によって打ち出される鉄の砲弾)の攻撃を防ぐ
  • 制約:15世紀末に可能だった技術を使う

2.物質場分析と発明問題解決の標準(標準解)

「新しい事態が生じて従来の方法が使えなくなる」ことは人間生活のあらゆる分野で絶えずおきていることです。石の城壁もその一例といえます。TRIZの基礎を作ったアルトシューラはこのようなよくあるタイプの問題を「標準問題」と名付け、それに対処するツールとして「発明問題解決の標準」を準備しました。

「城と大砲」のケースでは『1.2.1. 外部物質の導入による有害な関係の排除』という名前がついた標準(解)がぴったりです。

  • 標準:物質場の中の2つの物質の間に相互に対立する——有益と有害の——作用が起きている(そして、2つの物質同士が直接接していることが不可欠ではない)場合は、2つの物質の間に外部から無料のあるいは極めて安価な第3の物質を挿入することによって課題を解決します。
  • 解説:「城と大砲」のケースでも、城壁と砲弾という2つの物質の間に相互に対立する作用(「城壁が砲弾を止める」という有益な作用と、「砲弾の衝撃で城壁が壊れる」という有害な作用)が起きていて、城壁と砲弾とが直接接している必要はありません。そこで、この標準にしたがって、城壁と砲弾との間にどこかから「無料のあるいは極めて安価な第3の物質を挿入することによって課題を解決」することが示唆されているわけです。

3.解答例

標準の示唆に従うと、城壁と砲弾との間に例えば「土」とか「砂利」のような無料のあるいは極めて安価な第3の物質を挿入することになります。

4.史実

ピサの市民は街の周りを土塁で固めてフィレンツエ軍の進撃を食い止めました。

2016年1月のオープンタスク (2) : 大砲の改良

1.課題

  • 状況:大砲の砲身を鋳物で作る際に砲腔の部分は鋳型に円筒形の中子を挿入して作っている
  • 問題:砲腔が砲身の中央に正確に位置するように作ることが難しいため、砲身部の金属の厚さにバラツキが生じる
  • 目標:砲身の中央に正確に砲腔を作る
  • 制約:18世紀末に可能だった技術を使う

2.物質場分析と発明問題解決の標準(標準解)

既存の方法の精度が不十分なので改良したいということはしばしばあります。この状況も「標準問題」と言えるでしょう。ここでは、標準(解)『2.2.1. 制御が容易なエネルギー作用への移行』が有効です。

  • 標準:既に物質場が存在する場合、そこに含まれる制御できない(あるいは、制御しにくい)エネルギー作用を制御可能な(制御しやすい)エネルギー作用に変化させることによって、物質場の有効性を向上させられるかもしれません。例えば、重力の作用を機械的作用に変える、機械的作用を電気作用に変える、などです。
  • 解説:中子を使う鋳造法が確立されていたのですから、物質場はこれまで既にありました。重力の作用を利用して中子のまわりに金属を流し込んで砲身を作っていましたが、砲腔の位置を正確に制御することができませんでした。標準は重力作用に換えて機械的作用を利用することを示唆しています。

3.解答例

砲身に中グリ加工で穴を空けて砲腔を作る。

4.史実

スイス生まれのジャン・マリッツはドリルを使う機械加工によって砲身の中央に正確に砲腔を空ける技術を確立しました。

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